わたしが本気で恋したらこうなりました

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 近寄りがたいほどの美しい容貌と、それでいて人懐っこく柔らかな物腰で、誰がやっても失敗しない料理を次々と繰り出す理玖は、特に女性から熱狂的な支持を集めていた。  当然プライベートでも女性から大人気で、恋人はコロコロと変わっていた。恋人と長続きしないのは、彼が移り気だからでも、彼がモテすぎて恋人が嫉妬するからでもなく、付き合って段々と本気になった理玖が恋人を束縛するようになり、恋人がそれに耐えられなくなるからだった。  理玖は恋人を好きになればなるほど、いま恋人が何をしているのかが気になって仕方がなくなるのだ。確かに、そのせいで仕事がおろそかになることもある。でも、そこをサポートするのがスタッフの役目だと春は思うのだった。だいたい、いつも理玖をおだてては仕事を詰め込んでいるくせに、少し遅れただけで文句を言いまくるなんて、そっちの方が人間的にひどい。 押し黙っている春を見て、スタッフが同情したように言った。 「春ちゃんだって、せっかく理玖さんの料理が食べられると思って来たのに、がっかりだよね?」 「そういうわけじゃ」
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