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「でも、優佳さんがそんなこと言ってたなんて、理玖くんに言えるわけないでしょ。だから、どうしたいいかわからなくなって……」
「そのまま教えてやればいいじゃない」
「えぇ?」
「二人はうまくいかないってことでしょ。それならさっさと見切りをつけさせてやった方が本人も楽だろ。こっちだって早く仕事に戻ってもらわないと困るし。なんなら、おまえだって、その方が好都合だろ?」
「なにそれ、話にならない!」
勇人の思いやりのない勝手な言葉に腹が立った春は、思い切り勇人の足を踏みつけた。
足を押さえてうずくまる勇人を後目に、春は勇気を出して事務所のドアを開けた。
勇人には言わなかったが、実は、優佳に言われたことはそれだけではなかった。
どうして結婚してしまったのかと嘆く優佳に、春は、「理玖くんが好きだからですよね?」とつい責めるように言ってしまった。
すると優佳は春をじっと見て「大好きだけど、春ちゃんの方がもっと理玖を好きだし、理解しているのかもしれないね」と言った。
春は隠していた気持ちを優佳に見透かされてしまったような気がして、恥ずかしくなって逃げ帰ってきたのだった。
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