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本当に離婚することになってしまった。もちろんそう仕向けたわけではないが、勇人が言うようにこれが本当にわたしの望んだことなのか? わたしにとっていいことなのか?
「でも、優佳さん、泣いてたよ!」
あくまでも理玖に嘘をつきたくない春は、口には出さずに『きっと心の中では』と付け加えた。
理玖の動きが止まった。
春は続けて言った。
「ちゃんと話し合ってよ。優佳さんだって、不安に思ってるんだよ」
「……おれ、優佳のところに行ってくる」
そう言うと理玖はすぐさま事務所を飛び出して行った。
しばらく呆気にとられていたスタッフたちだったが、我に返ると、春に対して一斉にブーイングを浴びせ始めた。
その後、暗くなっても理玖が帰ってくることはなく、仕事はキャンセルになった。
春は、理玖が厨房に籠城して作りまくった料理をひとりで食べていた。もちろん、いつものように、記録用の写真をとり、わかる限りの材料と味や食感の感想を書き留めながら。
ほかのスタッフは怒って帰ってしまったが、勇人はまだ残っていたようで、厨房に入ってきて、春が食べる姿を眺めながら言った。
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