9人が本棚に入れています
本棚に追加
「せっかく別れるべくして別れるところだったのに、余計なことして。おまえは本当に偽善者だな」
黙々と食べ続ける春。
「これ全部食べる気か? そんなにバカ食いしたら、太るぞ」
春は握っていた箸を調理台にバンと叩きつけた。
「太って悪いか! このぽっちゃりお肉は理玖くんへの愛の証しなんだから!」
勇人は突然春に怒鳴られて驚いたのか、固まってしまった。
再び食べ始める春。
「……あぁ、そうなんだ」
しばらくして勇人は深く納得したというようにそう言って何度もうなずいた。
結局、理玖と優佳は仲直りをして、一層ラブラブになった。
あの日、すべての料理を見事に食べ切った春だったが、さすがに容量オーバーでお腹を壊し、ついでに体調も崩し、一気に5キロも痩せてしまった。
大学の実習が始まったこともあり、しばらく事務所に顔を出さないでいると、心配した理玖が、やっぱり春がいないと仕事をやる気にならないと電話をしてきた。
「これからもそばにいてよ」
春はなんとなく胸が痛むのを感じて、即答できなかった。
最初のコメントを投稿しよう!