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春としては、大好きな「お兄ちゃん」である理玖の仕事を手伝いたいと思ってよく事務所に来ているのだが、スタッフたちは彼女のぽっちゃり体形を見て、勝手に理玖の料理めあてで通っていると決めつけているのだ。
春は、スタッフの勝手な言い草に少々腹が立ったものの、理玖をピンチから救う方が先だと思い、すっくと立ち上がって言った。
「わたし、心当たりを探してくる!」
「ちょっと待て」
使命感みなぎる春を引き留めたのは、この騒ぎの中、ひとりパソコンに向かって黙々と作業をしていたスタッフの町井勇人だった。
春は、勇人の鋭い眼光を見るといつも責められているような気分になるので、苦手だった。
「お前は学校があるだろ?」
春の本業は短大生だった。
「余計な世話焼いてないで、学校に行け。ちゃんと勉強しとかないと、なんの取り柄もない、使えない大人になるぞ」
確かに学校はさぼりがちだったが、それは理玖の仕事を手伝うためであって、遊んでいるわけではない。余計なお世話なんて、失礼な言い方だ。
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