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フードコーディネーターで、スケジュール管理もできる、しっかり者の奥さんができたからには、自分にできることもう何もない。そんなことを考えていると、春は妙に悲しくなってくるのだった。
ベッドから起き上がる気になれないでいると、どこからかスマホの着信音が聞こえてきた。
仕方なく起き上がり、バッグを探してスマホを取り出すと、理玖からの着信だった。
一瞬迷ったが、これまで理玖の電話には何があっても出て、メッセージにも即レスをしてきた春としては、やはり無視する選択肢はなかった。
「もしもーし」
『春? おれ』
「うん。どうしたの?」
『どうしたのって、それはこっちのセリフ。最近、全然会いに来ないだろ』
「あー、うん」
『もしかして、おれが結婚したのが嫌だった?』
「そんなわけないじゃん!」
『じゃあ、事務所でもマンションでも遊びにおいでよ。今日? 明日?』
「ごめん、最近、学校が忙しくて。切るね!」
春は理玖の応答も待たずに電話を切った。
理玖に対して、こんな態度をとったのは初めてだった。春はさらに重い気持ちになって、崩れ落ちるようにベッドに倒れ込んだ。
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