わたしが本気で恋したらこうなりました

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 イケメン料理研究家として、メディアで何かと話題の有元理玖の事務所では、約束の時間になっても彼が事務所に姿を現さないので、スタッフたちがざわついていた。  スタッフのひとりが事務所の電話の受話器を置いて叫んだ。 「だめだ、電源切ってる!」 「まさか、また悪い癖が出てきたとか?」  スタッフたちは一様にうんざりとした顔になる。 「まじか……。春ちゃん、何か知ってる? 最近、理玖と彼女さんとの仲はどうなの?」  突然、話を振られた三堀春は、あいまいに首をかしげた。ふっくらした体形に、いかにも健康そうな血色の持ち主の彼女は、この事務所のスタッフではない。 「順調、じゃないですか?」 「順調ってことは、そろそろ本気になる頃だよな」 「これは、まずいですね」 「毎度毎度、30にもなる男が、いい加減にしてほしいよ。どんだけ俺たちが尻ぬぐいさせる気だ。いくら才能があっても、人間的にはどうかと思うぜ」  理玖に対する文句が止まらないスタッフたちの横で、春は不機嫌そうにそっぽを向いた。
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