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再会
大学を卒業し希望の就職が叶って、前途は明るくスタートした。
だが、落ち着いた日常が戻ると、折に触れ彼への思慕が湧き上がった。
あの頃の重い空気も忘れたわけではない、それでも出会った頃の熱い気持ちも忘れてはいなかった。
時が経てば忘れられると思っていた・・・・・新しい職場で新しい出会いもあった。
それでも求めているものではなかった、出会いと別れを繰り返し何処へ行っても心が躍ることはなく、虚しさと後悔に苛まれた。
今更だと自笑しながら、それでも逢いたかった。
あいつの声があいつの匂いが恋しかった。
別れて5年が経った、偶然逢うことも見かけることもなく、電話番号も変わっていた。
あいつにとってあの頃のことは遠い過去だ………
そう思う事で日々をやり過ごす。
それでもたまらなくなるとバーを訪れ時間を過ごした。
そろそろ帰ろうかと椅子から降り、振り返った時に2人の客がもつれるように入ってきた。
その客を見た瞬間・・・・・・・時間は止まり、思考が停止した。
目が離せなかった・・・・・あいつだった。
何度も夢に見た懐かしい顔、苦しくなるほど逢いたかったあいつがそこにいた。
知らない男と抱き合い、キスを受け身体を預け、もつれ合う男………紛れもない月島 鳴海がそこに居た。
逢いたいと願い・・・・・・泣きたくなるほど恋しく忘れられなかったあいつ・・・・・
立ち上ろうとした足に力が入らない・・・・・・崩れ落ちそうな身体をもう一度椅子に戻した。
あいつに背を向けジッと気配を窺がった・・・・・・・二人がソファーに座ったのを見て、椅子から立ち上がった俺は、そのままカウンターに身体を預け突っ伏した。
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