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ずっとこのまま
ドアの前に立ち一呼吸してチャイムを押した。
ドアが開いて鳴海が立っていた・・・・・・俺の手を引き抱きしめた。
背中にまわした手に力を込める・・・・・・あいつの匂い懐かしいあいつの身体・・・・・・大人のあいつが俺を抱きしめた。
胸に顔を押し付けあいつの香りを吸い込む・・・・・・昔と何も変わっていない、あいつが居た。
「鳴海・・・・・元気だったか?」
「君は?」
「あぁー元気だった・・・・・・」
「俺、ゆうべは・・・・・・なぜあそこにいた?なぜ君は・・・・・」
「・・・・お前は若い男と抱き合ってキスをしながらあの店に入ってきたんだ・・・・覚えてるか?」
「俺が?・・・・・・まさか・・・・・昨日は職場の新人歓迎会で間違って酒を飲んでしまって・・・・・・後はよく・・・・・・」
「だから・・・・・飲むなって言ってたのに・・・・・」
「若い男って?」
「知るか」
「・・・・・・で君はあの店に偶然居たの?」
「そう・・・・・・カウンターで飲んでてそろそろ帰ろかって時にお前が入ってきた、若い男に抱かれて・・・・・・」
「ごめん・・・・・・5年ぶりだな・・・・・・・俺‥‥…ずっと逢いたかった・・・・・碧の事忘れたことなかった・・・・」
「知ってる・・・・・・夢にも見たんだろう?」
「・・・・・夢?・・・・・」
「お前ゆうべ酔って俺の夢見てただろう・・・・・」
「・・・・・見た・・・・・・いつも見てた・・・・・・なぜ知ってる?」
「お前が俺の名前を呼んでたんだよ・・・・・・あおい・・・あおい・・・・って」
「ほんとに?」
「あぁ~嬉しかった」
「お前今一人?」
「君は?」
「俺が聞いてんだろ」
「恋人も好きな人もいない・・・・・ずっとお前の事を想ってた・・・・・あの日から時が止まったみたいにお前の事ばかり考えた‥‥…もう一度やり直したい」
「鳴海・・・・・・ありがとう・・・・・・・お俺もずっとあの日からお前の事しか考えられなかった・・・・・・やり直そう俺たち・・・・・・」
俺達はもう自立した大人だ・・・・・・誰に遠慮もいらない・・・・・・お互いに一人で立って行ける・・・・・・今ならきっとあの頃感じた不安も無くなるだろう。
あいつへの思いが今蘇る・・・・・・もう一度愛を伝えよう。
幼かった俺たちは大人になって本当の愛を知った・・・・・・お前も俺も5年の時を別々に過ごした事は無駄ではなかった。
明日からまた同じ時を生きよう・・・・・今度こそずっと一緒だ。
完
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