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デート
都心から電車で四十分ほど揺られた先の駅が、私たちの目的地だった。社長は車を出そうかと言ってくれたが、私が断ったのだ。
改札をくぐると、人気の少ないタクシーロータリーと寂れた商店街が広がる。
長閑といえば長閑で、休みだと言うのに行き交う人の数は少ない。
周囲を見渡しながら、社長が口を開いた。
「……ここは、雨宮にとって特別な場所なのか」
誰かの宝物に触れるような、慎重な声音だった。私は微笑う。色褪せた商店街のアーケードを眺めながら、
「ここは、私の生まれ育った町なんですよ。私が十八歳の時、姉が亡くなるまで」
社長が息を呑む。私はくるりと振り向いて、挑むようにその顔を見つめた。
「さあ、行きましょう。雨宮家の墓参りに、お付き合いいただきますよ」
社長は一瞬たりとも視線を揺らさなかった。しっかりと頷き、
「分かった。それなら花を買っていってもいいか」
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