デート

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■ ■ ■  雨宮家の墓は、住職さんが掃除してくれているのか、誰も参らない割には綺麗だった。 「……まあ、さっきの会話でだいぶお察しかと思いますが、私は早くに両親を亡くしているんですね」  花屋から墓場までの道中、柾さんは一言も口をきかなかった。  私も話題を振るような事はせず、二人して黙々と日差しの下を歩いた。  柾さんは花束を抱えて、墓から少し離れた場所に立っている。  正しい距離感を測っているようだった。妙なところで誠実な人だ、と笑いたくなる。  私は一人で花束を備え、線香に火を付けた。  辺りに白檀の匂いが漂い始める。  それを吸い込んで、なるべく平坦に話し出した。 「十一歳の時に事故で両親を亡くして、私は七歳年上の姉に育てられました。ほとんど母親のようなものです。両親の保険金を切り崩して、何とか二人で生活していました。やがて姉には婚約者ができます。職場で出会ったというアルファの男性です」  今まで無言で話を聞いていた柾さんが息を詰める。低い声で「……お姉さんの性別は?」と訊ねた。 「姉はベータでした。でも婚約者は気にせず、姉を愛していると言いました。私も何度か会いましたが、本当に誠実で優秀な人間でしたよ。ですが彼は、『運命の番』に出会いました」  街中でナンパされていた番のオメガを、婚約者が助けたのだという。
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