運命の番はここにいる

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運命の番はここにいる

 株主総会当日は、朝から灰色の雲が垂れ込め、曇り空が広がっていた。  鏑木商事による敵対的買収は大きなニュースにもなっており、株主総会の会場である都内のホテルには大勢の人が詰めかけている。  マスコミ対応で広報室はてんてこ舞いだ。  私もスーツを着用し、事務局として働いていた。議決権の集計が私の仕事だった。  事務局としてあてがわれたホテルの一室。議決権の事前行使率をPCで確認し、私は唇を噛む。 「足りない……」  今年はかつてないほど議決権の事前行使率が低かった。  例年は八割近くが事前行使し、株主総会に実際に出席するのは百五十人程度だったというのに、今年は事前行使率が五割で、出席者数は未知の世界だ。  これで後はもう、総会の会場での賛成数がものをいうわけだ。  唸っていると、西田先輩がバタバタと部屋に駆け込んできた。 「雨宮さん! 社長どこ行ったか知らない?」 「この時間なら役員リハじゃないですか?」 「もう始まるのに社長だけ来ないのよ。秘書課の人も知らないって言うし、あと十五分でリハ始まるのに!」  ざわりと不吉な予感が肌を撫でる。  社長に限って、逃げるなんてあり得ない。いないということは、不測の事態が起きたのだ。  そして、社長に起こる不測の事態など、一つしか考えられない。  私は居ても立っても居られず部屋を飛び出した。
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