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運命の番とは、アルファとオメガの間にだけ生まれる、特別な絆だ。
誰かが診断してくれるわけではない。
ただ、その人と出会った時には必ず分かるという、唯一無二の運命の相手。
アルファがヒート中のオメガの頸を噛むことで、番は成立する。
そうやって番を得たオメガは、以降ヒートが収まり、フェロモンを出すこともなくなるのだそうだ。
まるで御伽噺のように、王子様とお姫様はいつまでも幸せに暮らしました、というわけだ。
その陰で、村娘が泣いていようとも。
私の疑問に、社長が頷いた。
「だろうな。あれほど激しいヒートは初めてだった。正直に言えば、俺は今、認可ギリギリの抑制剤を服用している。そうしないと、雨宮と目も合わせられないからだ」
「えぇっ⁉︎」
ギョッとして思わず社長を見つめ返してしまう。
普段通りに見える……が、確かに少し顔色が悪いかもしれない。まじまじ瞳を覗き込むと、わずかに視線が揺れた。
その奥に情欲が滲んだ気がして、私は慌てて身を引く。
またあんなことがあったら、今度は万年筆では済まない。
フォークの先端で傷口を抉る想像をして私は気を鎮めた。
「雨宮は何も感じないのか?」
社長は見定めるように目を細めた。私は腕を組み、うーんと唸る。
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