392人が本棚に入れています
本棚に追加
「正直に言えば、クラクラするような感じはします。でもそれが、今まで来たこともない高級レストランのせいなのか、綺麗な夜景のせいなのか、社長が運命の番だからなのか、全然区別がつかないんです。だから確信が持てなくて……」
「確かめる方法は簡単だ。雨宮が俺の頸を噛んでみればいい。それで番が成立すれば運命の番で、そうでなければ違う。それだけだ」
「ああなるほどー……って、本当に運命の番だったらマズいじゃないですか⁉︎ 何既成事実を作ろうとしてるんです!」
とんでもない発言に、私は相手が社長ということも忘れて叫んでいた。社長が甘く微笑んで言う。
「当然だ、やっと見つけた運命の番だぞ。逃がすわけがないだろう」
「やっとぉ……?」
その一言が引っかかって、私は片目を眇めた。
対する社長は深々と嘆息して背もたれに身を預ける。
明らかに、口が滑った、という風情だ。
私はずいと身を乗り出した。
「運命の番を探す理由があるんですね?」
「アルファかオメガに生まれれば、一度は運命の番を夢見るものじゃないか」
「いえ、私は一度もありません」
「そうか?」
すっと伸べられた社長の指が、私の頬に触れた。
柔らかく肌を撫でられる感覚に、勝手に顔が熱くなる。
最初のコメントを投稿しよう!