婚約者

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「正直に言えば、クラクラするような感じはします。でもそれが、今まで来たこともない高級レストランのせいなのか、綺麗な夜景のせいなのか、社長が運命の番だからなのか、全然区別がつかないんです。だから確信が持てなくて……」 「確かめる方法は簡単だ。雨宮が俺の頸を噛んでみればいい。それで番が成立すれば運命の番で、そうでなければ違う。それだけだ」 「ああなるほどー……って、本当に運命の番だったらマズいじゃないですか⁉︎ 何既成事実を作ろうとしてるんです!」  とんでもない発言に、私は相手が社長ということも忘れて叫んでいた。社長が甘く微笑んで言う。 「当然だ、やっと見つけた運命の番だぞ。逃がすわけがないだろう」 「やっとぉ……?」  その一言が引っかかって、私は片目を眇めた。  対する社長は深々と嘆息して背もたれに身を預ける。  明らかに、口が滑った、という風情だ。  私はずいと身を乗り出した。 「運命の番を探す理由があるんですね?」 「アルファかオメガに生まれれば、一度は運命の番を夢見るものじゃないか」 「いえ、私は一度もありません」 「そうか?」  すっと伸べられた社長の指が、私の頬に触れた。  柔らかく肌を撫でられる感覚に、勝手に顔が熱くなる。
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