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 2 道永  店に戻ってきた黒スーツの男は「万事予定どおりです」と道永に報告した。 「本当に大丈夫なのか? 心臓が使えなくなったら意味がないんだぞ」 「彼を轢いた車もこちらが手配しました。数時間後には移植の準備がはじまるものと思われます」 「そうか。おまえは本当に頼りになるな」  昔からトラブル処理が上手い男だ。段取りを具体的に話さなくても、道永の望みを叶えてくれる。しかし、今回は珍しく彼のほうから道永に質問があった。 「どうして斉木徹と会ったのですか? 失礼ですが、食事などせずに事故を仕組んだほうが簡単かつ確実なはずですが」 「たしかに君の言うとおりだよ。俺としては黙って心臓をいただくよりは、正面から堂々と頼み込んだほうがマシだと思ったんだ。それに、彼から心臓をもらうなら、最後の晩餐くらいこっちが用意しないと」  心臓移植のドナーになってくれと頼まれたところで応じるはずはない。最初からわかっていたが、コソコソ動きまわるよりは楽だ。 「さあ、そろそろ医療チームと合流するか」 「かしこまりました」  黒スーツの男は、道永専用の車イスを押してきた。症状が悪化してから手配したものだ。自力で立てなくもないが、体に障ると主治医から言われているので止むを得ず利用している。 「この車イス生活からもやっと解放されるな」  車イスの肘かけ部分をポンとたたきながら道永も店を後にした。
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