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杏華はこれでも愛想はいいほうで、接客業が苦手なわけではないはずなのだが、どうにも行き詰まりを感じてしまう。
何か他にいいアルバイトはないものかと杏華がふらふらと街を歩いていると、とある張り紙が目に飛び込んできた。
「メイド募集。未経験歓迎。やる気のある方ならどなたでも……」
見れば、そこには立派なお屋敷があった。その姿はどことなく、かつて杏華が暮らしていたお屋敷を彷彿とさせる。
「懐かしいですわね……。もうあの日々が何年も昔のことだったように感じられますわ。
せめてもう一度、あのお屋敷で暮らすことさえできれば……」
そう思いかけたところで、杏華はぶんぶんと首を振る。いくらなんでもかつての令嬢がメイドだなんて、あまりにも屈辱的過ぎる。
気を取り直して、そのお屋敷を素通りしようとするが、その目の端に先程は気付かなかった文言が捉えられた。
「住み込みOK。三食昼寝付き……!?
く、くぅううううううぅうう!!!」
住み込みということはつまり、このお屋敷で寝泊まりができる!?
そして、もやし料理ではなく、優雅なフレンチが食べられる!?
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