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その男はどうやら財前家に勤める執事のひとりらしい。
まだ若く気の弱い彼は、杏華の勢いに尻込みしてわけも分からず謝罪の言葉を口にした。
「そんなことより、わざわざ学校にまで来るなんて、一体なんの騒ぎですの?」
「は……、それが、その……。だ、旦那様が……」
「父上が……? まさかご病気でお倒れに!?」
「い、いえ……、そういうわけではなく……、その、全ロストしました!!」
「………………はい?」
今度は杏華が首を傾げる番だった。全ロストした? 一体何を?
「つまりその、旦那様が闇のゲームに敗れて全財産を失ったのです!!
財前家はこれにて無一文になりました!!」
「んなーーーっ!!???」
闇のゲーム、それは資産家たちが集まり、それぞれの資産を賭けて戦う禁断のゲームである。
その種目はトレーディングカードゲームから鉄骨渡り、王様ゲームまで多種多様だ。
最近ではそれぞれ1本ずつタコの足を引っ張って、最後まで足がちぎれなかった者が勝ちというタコゲームも導入された。
杏華の父は、そんな闇のゲームに全財産をベットし、そして敗れてしまったのだ。
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