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その翌日から杏華は三段積みの豪華なお弁当箱で、もやしを食べる生活を送ることとなった。
「くっ……、今はまだ母上の分の貯金で暮らせますが、少しでも節約するために今は我慢のときですわ!」
なお、さすがに使用済みのお弁当箱は売れる当てもなく、そのまま使うことになったのだが、それがより惨めな様子を演出していた。もやしをもしゃもしゃと頬張る杏華に、誰も声をかけることができない。
しかし、事情は聞いているじみ子だけは、幼馴染の友達でもある杏華のことを心配し、おずおずと話しかけた。
「杏華ちゃん、私にできることならなんでもするから気軽に言ってね。
お腹空いてない? お弁当分けてあげようか?」
「じみ子……、気持ちは嬉しいのですけど、あなたもどうせそうめんでしょう?
そのお言葉だけで結構ですわ」
「そっか、要らないかあ、めんつゆ」
「めんつゆのみ!?」
じみ子は残念そうに、めんつゆの入った容器をスクールバッグにしまう。その表情は本当に悲しげで、裏表なく杏華を気遣っていることが感じられた。
その姿に杏華は率直な疑問をぶつける。
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