青い鳥

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 葉月のかざした日本刀を目前に、同じ18歳の流月はふてぶてしく笑っていた。彼も日本刀を握っている。二人は向かい合い、じりじりと間合いを詰めていた。彼の細い体もまばゆい眉目ももはや彼女の目には得物のための餌食としか映らなかった。  彼女の父、利政は部屋の隅で静に息を引き取っていた。葉月と流月の持っている刀は利政がコレクションしていたものだ。利政は異能者で、生前、異世界を飛び回る男だった。そのため不思議な道具はコレクションルームに山ほどあった。  彼女は利政と血のつながった娘だが、流月は養子だ。孤児だったのを利政が引き取った。葉月と流月はある時から利政の正体を知り、彼の力を借りて幸福の青い鳥を探し始めた。何度も助けあった。見つけた青い鳥が互いに違っていただけだ。  流月はつけている指輪のダイヤルを回した。彼の姿は輪郭を失い、まとっていた服の色だけの残像になり、最後に全てかき消えた。葉月はシングルの耳飾りをしていた。やはりダイヤルを回して彼を追いかける。時のはざまに滑り込み、暴食の森にたどりついた。
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