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「上等だ」流月は愉快そうだった。「“僕の目的は君を殺すこと”」
小雨が降ってきた。みるみる本降りになる。二人は雨にうたれながら向かい合ったまま連呼した。
「“私の目的はあなたを殺すこと”」
「“僕の目的は君を殺すこと”」
「“私の目的はあなたを殺すこと”」
「“僕の目的は君を殺すこと”」
彼は首をかしげて彼女に尋ねた。
「何で」
「意味不明」
彼女もわけがわからなかった。
「雨宿りしようか」
「それもそうだね」
しかし忘却の雨が降っている間は同じことを連呼しなければならない。
「“私の目的はあなたを殺すこと”」
「“僕の目的は君を殺すこと”」
小一時間ほどこれを繰り返したあと、だんだん霧雨になってきた。彼はぽつんとこぼした。
「イトーキョーカドーのコロッケって高すぎるよな」
「“私の目的はキョーカドーのコロッケを安くすること”」
「“僕の目的はキョーカドーのコロッケを安くすること”」
霧雨もやんだ。二人は確認し合うように連呼を締めくくった。
「“僕の目的はキョーカドーのコロッケを安くすること”」
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