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「今日のおかず、これだけ?」
テーブルに並べたおかずを見て、直人が顔をしかめた。今日の夕飯は、なすとひき肉の炒め物と、ごはんと味噌汁。おかずが1品しかないのが不満なのだろう。
直人の家でごちそうになると、食卓にいくつもの料理が並ぶ。どれも手が混んでいて、味がしっかり染みていて、すごくおいしい。
比べて私は、複雑な料理は得意ではなかった。冷蔵庫にある食材を組み合わせておかずをいくつも作れるのは、料理が得意な人の為せる技なのだと知った。仕事をして帰ってきて、そんなに手の込んだものは作れない。
文句言うなら自分で作ってよ。そう言いかけたとき、
「おっ、あるじゃん、もう1品」
直人が冷蔵庫を開けて、醤油と豆腐を2パック取り出した。
「あと1品、豆腐でいいんだ」
何か調理をしなければいけない、と勝手に思っていた私は、ちょっと拍子抜けした。
「豆腐でって、栄養豊富なんだぞ、豆腐」
つい難しく考えてしまうのは、私の悪いクセだ。
きっといまだって、直人は文句を言ったつもりじゃなく、ただ“おかずこれだけ?”と聞いただけなのだろう。
それなのに私は文句と勘違いして、ついむっとしてしまった。
お義母さんと比べられているような気がしたから。
仕事と家事を両立して、さらに子どもを3人育てあげたお義母さんは立派だと思う。
比べても仕方ない。
わかっているけれど、自分のことで精一杯な私がなんだか出来損ないのように思えてしまう。
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