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「カンパイ」 缶ビールをグラスに注いで、カツンと合わせた。 「お、茄子、味しみててうまい」 「ほんと? よかった」 ごはんを食べながら、晩酌をする。 仕事の愚痴や友達の話をして笑いあう。 だけど、なんとなく、友達の子どもの話は、できない。 『もし私たちが同じ年に子ども産んだら、幼稚園も学校も一緒で、絶対かわいいよね!』 冗談だとわかっているけれど、萌の言葉を思い出して、無意識に焦ってしまう。 私たちはもう何ヶ月も、触れていない。 結婚して、もうすぐ2年。 知り合ってからは、7年。 それだけ経てば、新鮮さなんて自然と薄れていく。 これがマンネリか……。 車販売店で働く直人は不定休で、事務職の私とはもともと休みがあわせづらかった。 今年に入ってからはとくに忙しいらしく、前にも増して残業や出張が増えた気がする。 忙しくても、なるべく一緒にご飯を食べて、一緒に寝るようにしている。 でも、最近、無理してそうしているような気がしている。 ベッドに入って、しばらくお互い黙って携帯を見てから、電気を消す。 「おやすみ」 そう言って、しばらくすると隣から直人の寝息が聞こえてくる。 いつからか、直人は私に背を向けて寝るようになった。 直人の背中を見るのが辛くて、私も直人に背を向けるようになった。 どうしてだろう。 いちばん近くにいるはずなのに。 なんでも言い合えると思っていたのに。 ーーねえ、 直人はどう思ってるの? いちばん聞きたいことが、どうしても聞けなかった。
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