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「そうか、死んじゃうのか!」
『人の死を超越した存在が私ということだ、わっはっはー』
焦がれたような残影の空気が網戸の目を抜けて部屋に循環していく。ぽつぽつと浮き出た汗が脚から布団へ染み込んでいた昼下がりに、携帯からまだまだ夏を掴んで離さない汐梨の声が鳴った。
『今の私にはネットのすべての知識が瞬時に出てくる。さあ、なんでも聞き給え、答えてしんぜよう』
「今何色の下着をつけてるの?」
『403 Forbidden。ページを見る権限がない場合に出るエラーです。ページを見ようとしたが、アクセスが「禁じられていた」ためにアクセス拒否されました』
「はぁ?」
裏返った声を蹴り飛ばす勢いで飛び起きて、片膝をついて唸った。
「フィルタリング解除っ!」
『18歳未満の場合は親権者の同意書が必要です』
「解除解除解除解除解除、かいじょぉ~」
おららららと画面をタップし続ける。カッカっと爪が当たるが気にせず「解除解除」と発狂し続ける。
『1024件のウイルスが検出されました。この問題をあと10秒以内に解決されない場合、ウイルスによってすべての汐梨ちゃんが、』
「おい!」
警告表示が出て手を止めた。9、8、とカウントダウンが始まり、停止ボタンを探すが見つからない。電源を切ろうにも慌てすぎて携帯を落としてしまう始末。拾い上げて見た時にはすでに3の数字。
『2、1、』
「まっ、」
『集結します』
ぽぽぽぽぽぽと画面いっぱいにマスコットくらい縮んだ汐梨で埋め尽くされた。
「幸せかよっ!」
とりあえずスクリーンショットしまくった。
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