7人が本棚に入れています
本棚に追加
ママの遺体を隠そうと、深夜に運び出している途中で恩田エレクトロニクス株式会社の人間に見つかった。
不幸中の幸いと言えるのか…。
恩田社は死んだ本人にすら気付かれることなく身体をアンドロイドに入れ替え、遺体を処理してくれるという。
製作に3週間を必要とし、美和には「ママはお友達と旅行へ行った」と伝えた。
ただ、製作には莫大な金がかかる。
割のいい仕事先も紹介してもらい、3年間必死で働き、稼いだお金を『ママ』の製作料金の支払いに充てた。しかし、ウチには「単身赴任」と言っておいたので、ダミーの給料を家に振り込む必要があり、その分の一千万円がどうしても料金の支払いに足りなかった。
仕方ない。
アンドロイドではあるが『ママ』に頭を下げて、親から貰ったのと独身時代に貯めたというママの貯金一千万円を借りる事にしよう。
会社でミスをして損害を与えた…とでも言えばいい。
さぁ、週末には3年ぶりに我が家へ帰るぞ。
俺はウキウキ気分で宿泊地の薄っぺらい布団に潜り込んだ。
それにしても『弊社の研究にご協力いただく事』とはどんな事なのだろう。
より完璧なアンドロイドを作成するためか?
そういえば『ママ』を作ってもらった時、善悪のコントロールが時々上手くいかなくなると言っていたかな。
アンドロイド本体を恩田社に持ち込めば無償アップデートしてもらえるらしいが、今のところ特に問題ないようだし…。
俺は自分の身にこれから起こる事を全く想像する事なく、幸せな気持ちで眠りについた。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!