12話 大事な人【Side 倉田亮】

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夕夏さんは「じゃあ、ご馳走になります」と言って、メニューからいろいろ頼んだ。 尾行中なので、二人とも飲み物はノンアルのカクテルにした。 「なんか、居酒屋って久しぶり」 わくわくとした表情を浮かべる夕夏さんが可愛い。 「亮くんは塾の先生とかと飲みに行くの?」 来たばかりの大根サラダを夕夏さんが取り分けながら言った。 「偶に行くぐらいです」 「ふーん。あ、塾の受付の子、亮くんに気があるよね」 僕の前に取り分けた大根サラダのお皿を置き、夕夏さんが興味深そうな瞳を向けてくる。 「いきなりなんですか」 「亮くん、気づいているのかなと思ってさ」 受付の中山さんの顔が浮かんだ。 彼女からは夏合宿の時に告白された。当然、断ったが。 「亮くんってさ、そういうの鈍感そうだから」 カクテルを飲んで上機嫌に笑う夕夏さんに、夕夏さんの方が鈍感ですよと言いそうになった。
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