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1話 塾の先生
駅から徒歩5分の所に誠が通うK2塾がある。6階建ての雑居ビルの1階から3階までが塾で、4階は音楽教室、5階は歯科医院と眼科、6階は司法書士事務所が入っている。
駐輪場に自転車を止め、バタバタと1階の塾の中に入ると、受付の所に制服姿の誠がいた。
「お母さん、遅い! 面談は17時からだって言っただろ?」
壁時計を見ると17時10分。
あちゃー、10分遅刻。
「朝、あれほど遅れるなって言ったのに」
マネージャーに残業を頼まれて断れず、退勤時間が一時間遅れた。予定では一度家に帰ってから、出てくるつもりだった。
「ちょっと売り場でゴタゴタしちゃってさ。でも、お母さん、ショッピングセンターから全力で自転車こいで来たからさ」
それが何? というような冷たい視線を誠が向けてくる。
「お母さん、時間を守るのは当たり前の事だよね? 17時の約束なら、5分前の16:55には着いてないといけないんじゃない?」
うっ。返す言葉がない。
「遅れてすみませんでした」
「わかればよろしい」
誠にお説教をされるとは思わなかった。全く、生意気な事を言うようになったものだ。
「ところでお母さん、汗くさいんだけど」
傍に行くと、誠が鼻をつまんだ。
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