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「はい。水野です」
手を挙げて、返事をすると、スーツの男性がこっちに来る。ファイルを脇に抱えて歩いてくる姿が絵になる。テレビドラマの中のワンシーンみたい。華があるというか、この人、イケメンだ。
「はじめまして。誠くんの担任になった倉田亮です」
私の前に来た倉田先生が右手を差し出した。つられるように手を出すと「よろしくお願いいたします」と握手をされたからびっくり。
先生のつるっとした手を感じて恥ずかしくなる。私の手は肌に艶がないし、ガサガサで、きっと触り心地が悪い。それに汗もかいてる。気持ち悪いって思われたかも。
目が合うと二重瞼の大きな目がニコッと微笑んだ。うわっ、甘い顔立ち。女性にモテそう。担任が変わったなんて聞いてないんですけど。誠は肝心な事は言わないんだから。
「あの、遅れてすみませんでした」
初対面で遅刻して、だらしない親だと思われたかも。
「大丈夫ですよ。こちらこそ、お忙しい所、お時間を作って下さり、ありがとうございます」
この先生、前の先生よりも誠実そう。
「では、水野さん、こちらにどうぞ」
倉田先生に促され、誠と一緒に奥の面談室に入った。
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