1話 塾の先生

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面談室は白いテーブルとキャスター付きの黒い椅子が四脚あり、先生に勧められるまま、誠とキャスター付きの椅子に座った。 倉田先生は私たちの向かい側で、手元のファイルを開いて、難しい顔をする。 誠に問題でも? 「誠くん、何か心配な事がありますか?」 キリッとした二重の目が誠に向く。真剣な表情もカッコいい。私が誠だったら胸キュンかも。 誠は驚いたように「えっ」と小さな声を出した。 「模試の結果なんですがね。前回の模試と比べて、合計点が百点落ちて、250点でした」 え! 250点! 必ず300点以上は取る誠が! 「誠くんらしくないミスが今回は多い気がしました」 先生が模試の解答用紙を誠の前に置いた。 誠の表情が青ざめていく。 「それに五科目とも、試験の後半は空欄が目立ちます。時間が足りませんでしたか?」 先生が解答用紙を全て目の前に並べた。先生が指摘した通り、後半にかけて空欄が目立つ。 「すみません。部活が忙しくて」 誠がくしゃっと頭をかく。 「この夏で三年生は引退でしたね」 誠が先生に頷く。 「今月末にある大会で最後になります」 この成績で大会に出ている余裕なんてあるの? 誠の志望校の合格点は確か360点から380点ぐらいだって、前の担任の先生が言ってたけど。 「誠、どうしたの? これじゃあ、志望校のランク下げないと無理だよ!」 誠がぴくっと肩を揺らす。 「水野さん、落ち着いて下さい。まだ大丈夫ですから」 「本当に大丈夫ですか?」 「はい。大丈夫です。この夏で取り戻せますから。ただ」と言って、倉田先生が誠を見る。 「誠くん、もし心配ごとがあるなら教えて下さい。誠くんが集中して勉強できる状況を作りたいんです」 目を細め心配そうに誠を見る倉田先生は心から心配してくれているよう。前の先生よりも親身になってくれる様子に感動した。倉田先生はいい先生だ。 「誠、どうなの? 心配な事があるの?」 誠が私を見る。 「ないよ」 「誠くん、本当にありませんか?」 倉田先生が誠をじっと見る。 「はい。心配な事はありません」 誠の言葉に倉田先生は納得していないような気がする。倉田先生は何か思い当たる事があるんだろうか?
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