君が大人になるまで

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 ユウコの家に行く途中だった。滑り込む電車の到着を知らせるアナウンスを私は放心状態で聞いていた。  階段を降りる私の後ろから、バタバタと急ぐ人の足音が聞こえて、次の瞬間にはその人の肩が勢いよくぶつかっていて、足が宙に浮いた。  まるでスローモーション。段差がまだまだあるところから落ちたものだから、滞空時間も長い。階段ってこんなに高かったんだと、そんなことを悠長に考えられるくらいには、私には理性が残っていたらしい。  拝啓、お父さんお母さん。推しに貢ぐような娘でごめんね。でも彼もいない世界じゃ私は生きる希望が何も無いや。  届きもしない遺書を脳内に残しながら、迫り来る大きな痛みと死を覚悟した。覚悟したのだ。
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