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わたしを見上げるチロルにだけ聞こえるようにそっとつぶやく。
「学校に、ネコをつれていけないの。だから、ごめんね」
そう伝えたら、首をかしげて普通のネコちゃんみたいに「にゃあん」と鳴いた。
チロルは意味がわかったのか、ついて来ることはなく、その場でわたしを見送っているように見えたのだけれど、曲がり角で振り返ったらいなくなっていた。
どこに行ったんだろう?
隠れるとこなんて、ないのに、とあちこち見回したわたしの耳に聞きなれないカチャカチャと言う音。
ランドセルを振ると、右側からその音が聞こえてくる。
……なに、これ?
ランドセルに見知らぬ黒ネコキーホルダーがぶら下がっていて、その首元にはチロルがつけていたものとそっくりの石がついたチョーカー風の首輪。
「え、え――っ⁉」
パニックになって逃げるように走り出すと途中でヒューガを追い越した。
カチャカチャ、カチャカチャ、キーホルダーは鳴りやまない。
こうして、わたしの『もう一つの昨日』の続きが、ようやくスタートしたのだった。
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