第二章「知らない昨日の続き」

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「おはよう」  右隣の席の香取(カトリ)マオちゃんに声をかけてから、自分の机の横にランドセルをかける。  かけながら、はずそうとしてもはずれないキーホルダーと目が合った気がして、あきらめる。 「メイちゃんのランドセルにかわいいネコちゃんついてる!」  私が戦っていたキーホルダーに気づいたマオちゃんがのぞきこむ。 「ガチャガチャ?」 「あ、ううん。おみやげでもらったやつ」 「そうなんだ、いいなあ」  ガチャガチャにあったなんて言ったら、流行り物好きなマオちゃんは探しに行きそうだもん。 「ネコといえば、メイちゃん、朝のニュース見た?」 「ニュース? 電気料金値上げの?」 「ちがう、ちがう。地域ニュースだよ。昨日、懸賞金(けんしょうきん)百万円のネコちゃんのチラシが隣の市や、うちの市にバラまかれてたんだって」 「ネコに百万円? よっぽどお金持ちの人が買ってたネコちゃんなのかなあ?」  チロルのこともあって、ネコと聞くと敏感になってる。  まさか、チロルのことじゃ? 「真っ白なネコちゃんで、名前はアイルっていうらしいの。首輪がちょっと変わってるって言ってたような。それにしても百万円ってすごいお金だよね。でも、どうやら嘘みたいなの」 「嘘?」 「そのチラシにのってる電話番号にかけても繋がらないんだって。ニュースではイタズラだろうって言ってた」  へえ、とうなずいたところで先生が入ってきて朝のホームルームがはじまり、すっかりその話のことは忘れてしまっていたのだけれど。
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