第二章「知らない昨日の続き」

3/14
前へ
/79ページ
次へ
 授業中も気になるのは、ランドセル横のチロルキーホルダーのこと。  これ、本当にあのチロルなのかな?  というか、しゃべったり時間を止めたり、チロルって何者なの? 魔法使い?  わたしは、普通のネコしか知らない、ミイみたいな。  キジトラのミイは去年亡くなっちゃった、うちで飼っていたおばあちゃんネコ。  いつもは、テレビの横でどっしりとかまえているのに、時々気が向いた時だけ、わたしの膝にのってきた。  それは決まって、わたしが友達とケンカした時や、テストの点数が悪かった時、ママにおこられた時。  まるで、わたしをなぐさめるみたいに近寄ってきては膝にのり、なでていいよと身体を預けてくる。  わたしが生まれる前から家にいたから、まるでお姉ちゃん気どりみたいで、かわいくて大好きで、あたたかくて重たくて。  だけど、ある日帰ったらミイは白い箱の中で眠っていた。  数日前から元気がなかったミイ。  その日の朝、わたしが学校に行く前に玄関まで見送って『にゃあ』と鳴いていたのに。  お昼寝したまま、亡くなったそうだ。  もう、おばあちゃんネコだったから、とママが泣きながらミイをなでていた。  あんなに悲しい別れをわたしは知らなかったから、目が溶けて無くなっちゃうかもってぐらい泣いた。  泣きながら、もう二度とネコちゃんは飼わないって決めた。  だって、だって、サヨナラは悲しいんだもの。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加