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おかしい、何かがおかしい。
そして、その「おかしい」は、その日一日わたしの周りで起きた。
「メイちゃん、すごい!」
今まで三段しか飛べなかった跳び箱を、五段飛べたことにビックリしたのは、クラスのみんなではなく自分自身だった。
「朝倉さん、六段も跳んでみる?」
「い、いえ、少し足を痛めてしまったので」
「あら、保健室に行きましょうか」
「大丈夫です、休んでればきっと」
ヨウコ先生の提案にあわてて首をふったのは、六段どころか今なら十段でも跳べそうな気がしたから。
助走をつけた瞬間、体がとても軽くなるのがわかった。
ロイター板に乗った瞬間、どこまででも跳んでいけそうになる。
まるでネコみたいに? ん? ネコ?
体育館の隅で膝をかかえて座りながら、開いた窓の向こうに黒く動くものが見えてギョッとした。
チロル!?
目をこすったら、もうそこには何もいなかったけれど。
緊張でしどろもどろになっちゃう国語の音読も、今日はスラスラ読めたし、掃除の時間も誰よりもテキパキ動けた。
なんなら、隣のクラスの廊下までキレイにしてしまって「今日のメイちゃんって、なんかすごい!」とマオちゃんが首をかしげていた。
うん、わたしもそう思う。
だって、まるでわたしじゃないみたいだったもん。
勝手に体が動く、そんな感じだったから。
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