第二章「知らない昨日の続き」

6/14
前へ
/79ページ
次へ
「ただいまあ」 「おかえり~、テーブルの上におやつがあるから、ランドセル片づけてらっしゃい」 「は~い」  玄関まで聞こえてきたママの声にしたがって、二階にある自分の部屋でランドセルを降ろして気がつく。 「あれ?」  さっきまでカチャカチャ音がしていたのに、キーホルダーが見当たらない。 「なんで? どこで落としたのかな?」 「なにを?」 「えっとね、黒ネコのキーホルダーなんだけど」  誰かの声にこたえてしまってから気がつく。  この部屋にいるのは、わたしだけのはずなのに?  声がした方に恐る恐る顔を向けたら、わたしのベッドの上で毛づくろいをしている、あの子! 「チロル!?」 「そう、チロル! ありがと、メイ。名前覚えてくれて」 「いえ、どういたしまして、ってそういうことじゃなくて! ねえ、今日一日変だったのってチロルのせいでしょう?」 「変? 変ってなにが?」 「突然右手が算数の問題解きだしたり、体育で跳び箱が跳べるようになったり」 「あー、それね! 良かったでしょ?」 「良かった? やっぱり、チロルがなにかしてたの?」 「そうだよ~、でも助かったでしょ? ちゃんと御礼はするって言ったじゃん」 「やりすぎだよ! あんなの、わたしじゃない!」
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加