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「ただいまあ」
「おかえり~、テーブルの上におやつがあるから、ランドセル片づけてらっしゃい」
「は~い」
玄関まで聞こえてきたママの声にしたがって、二階にある自分の部屋でランドセルを降ろして気がつく。
「あれ?」
さっきまでカチャカチャ音がしていたのに、キーホルダーが見当たらない。
「なんで? どこで落としたのかな?」
「なにを?」
「えっとね、黒ネコのキーホルダーなんだけど」
誰かの声にこたえてしまってから気がつく。
この部屋にいるのは、わたしだけのはずなのに?
声がした方に恐る恐る顔を向けたら、わたしのベッドの上で毛づくろいをしている、あの子!
「チロル!?」
「そう、チロル! ありがと、メイ。名前覚えてくれて」
「いえ、どういたしまして、ってそういうことじゃなくて! ねえ、今日一日変だったのってチロルのせいでしょう?」
「変? 変ってなにが?」
「突然右手が算数の問題解きだしたり、体育で跳び箱が跳べるようになったり」
「あー、それね! 良かったでしょ?」
「良かった? やっぱり、チロルがなにかしてたの?」
「そうだよ~、でも助かったでしょ? ちゃんと御礼はするって言ったじゃん」
「やりすぎだよ! あんなの、わたしじゃない!」
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