第一章「もう一つの昨日」

2/11
前へ
/79ページ
次へ
 思えば今日は、目覚めた瞬間から、おかしかったんだ。 『タスケテ!』  誰かの声で、ぼんやりと目が覚めてから、独特の美味しい匂いに気づく。   パンケーキの匂いだ!  二日連続、ママ特製パンケーキが朝食なんて幸せすぎない?  あわてて着替え、テーブルに向かう。 「ママ、おはよう! 今日も、パンケーキ?」   テーブルの上には、昨日と同じように焼き立てのパンケーキ、そして牛乳。  昨日、わたしがおいしいって、朝からたくさん食べていたから、今日も作ってくれたのかもしれない。  いただきますと手をあわせたわたしに、ママが不思議そうな顔をした。 「今日も? あ、そうだわ、メイ。今日までに出す校外学習のおたより、サインしておいたから先生に渡すの忘れないでね」 「え?」  昨日と同じように、パンケーキにイチゴジャムを塗ったわたしの目の前に、ママはおたよりを置いた。 ――――――  校外学習への参加を許可します  五年二組 朝倉(あさくら) 芽生(めい)  保護者 朝倉 悠子(ゆうこ) ――――――  なんで?  昨日、このおたより見たよ、わたし。  イチゴジャムたっぷりのパンケーキを食べながら、ママに渡されたじゃない。  ふとテレビから流れてきたニュースは、また電気料金の値上げ。  あの時、ママはこう言ってたっけ。 「またなの? 働いた分だけ電気料金に持って行かれちゃう気がする。ママは、そう言うんでしょ?」 「え?」  わたしの言葉にママは目をまんまるにした。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加