第二章「知らない昨日の続き」

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「あのね、チロルのチカラで算数ができたり跳び箱が飛べるようになったって、わたしの実力じゃあないでしょう?」 「それが、なに?」 「わたし、うれしくないの。だって勉強しないで解けたところで自分のためにはならないし、チロルのチカラなしに跳び箱は跳べないなんて、そんなの悲しい。わたし、いつか自分のチカラで跳びたいんだもん!」 「ヘンなの」 「ヘン?」 「ボクに任せてくれたら、なにもしなくても幸せな気持ちになれるはずだよ?」 「でも、わたしは自分の幸せは自分で決めたい。それはわかって」 「ん……、でもそれなら、ボクがどうしたらメイは幸せを感じる? 幸せだって思える?」  金色でまんまるなチロルの目がわたしを必死に見上げていた。  まるで泣き出しそうな顔をしているみたいに思えて、その頭をよしよしとなでる。 「わたしは、普通に幸せだよ? 今日だってチロルがケガしてなくて良かったと思ったらホッとして幸せな気持ちになった……、あ! ほら、わたし、ちゃんとチロルに幸せにしてもらったよ」 「ホントにホントにホント?」  チロルの目がもっとまんまるになって、口を横にニイッとひらく。  笑っているみたいだ。 「ホントにホントにホントだよ」  わたしが笑い返したら、チロルの首元の石がポワンとピンク色に光る。 「なに? 今の色って?」 「幸せの色だよ」  チロルが自分の心臓のあたりに手を充てて、優しく目を細めている。  幸せに色なんかあるの?
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