第二章「知らない昨日の続き」

11/14
前へ
/79ページ
次へ
 ボクらは、この首輪無しじゃ生きていけないネコなんだよ。  さびしそうな顔をしたチロルがため息交じりにそうつぶやいた。  首輪無しじゃ生きていけない? 「ハッピーペットは、ネコだけじゃない。イヌや鳥もいるんだよ」 「ハッピーワンコとハッピーバード?」 「ハッピードッグね、あと鳥は親しみやすいようにハッピーインコだけ」 「へえ」 「この首輪のおかげで、人間と話せるってわけ」  チロルが話せる理由は、この小さな首輪のおかげだということはわかった。  他のハッピーペットたちも、多分首輪をつけて人間と話すことができるんだろう。   「ハッピーペットとして選ばれるのはね、体が弱くて親に見捨てられた子たち。どこかに病気を抱えていて長く生きられないボクらのために作られたんだってさ、最初は」  ポンと自分の首輪を叩いてみせるチロル。  とっても元気そうに見えるけれど。 「チロルもどこか、病気なの?」 「ジンゾウ? って聞いた。アイルはシンゾウだって。でも生まれた時のことなんか覚えていないよ。そういう子たちは、死んじゃう前に研究所が探し出してくれて首輪をつけてくれるから」  生まれてすぐにお母さんと離されたとか、本当は健康じゃないと聞いてしまうと……。  なんだか涙が出そうになっちゃう。 「がんばったんだね」  思わず抱きあげて、ぎゅっと腕で包み込んだ。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加