第二章「知らない昨日の続き」

13/14
前へ
/79ページ
次へ
 もぞもぞとわたしの腕の中で動くあたたかくて、モフモフの小さな体。  その感触が、温もりが懐かしくて、少しだけ強くチロルを抱きしめる。  でも、どうしてだろう?  チロルの説明はわかりやすくて、納得できる部分もあるけど。  どうしても、ヘンだなって思っちゃうのは。 「なんか、ヘンだよね」 「なにが?」 「最初に博士が望んだとおりで良かったと思う。首輪に余計な機能なんかつけなくても、ネコはかわいいし、わたしはこうして抱っこしてるだけでも幸せなのに。未来の人間は、本当に幸せだった?」 「どうしてそんなこと聞くのさ。まるでアイルみたい」  すでに切り替わったニュースをじっとチロルが見つめている。  小さなため息が怒っているみたいに感じる。 「今、アイルを探しているのは研究所の人間なんだ。不良品になったアイルを回収しようとしてるんだよ。アイルの危険な行動に気づいた研究所の人間に追われて、この時代に逃げ込んだ。そこまではわかってる」 「アイルちゃんは不良品なの?」 「そう。だからボクは、研究所の人間より前に、アイルを探し出して説得するためにやってきたんだ。ボクら、ずっと友達だったから」  アイルちゃんのことを、チロルがなぜ不良品と呼ぶのか、それは話してくれなかったけれど。  本当に心配していることだけは、その目を見ればわかった。   「メイ、お願い。アイルを探すのを手伝ってほしい」 「いいけど、どうやって探すの? 心当たりはある?」 「近くにいるのはわかるんだ。アイルの匂いがするから」
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加