第二章「知らない昨日の続き」

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 丁度その時、玄関のドアが開く音がして、ママの「ただいまあ」って声が聞こえた。 「メイ、ボクが話すのはキミとだけだからね? わかってる?」 「わかってるよ」 「にゃあん」  よくできました、とでも言いたげに、チロルはわたしの腕から飛び出るとママの元にスタスタ歩いていく。 「あらあ、チロルってば、ママのこと迎えにきてくれたの? お腹すいたよねえ、どれがいいかな?」  両手いっぱいに猫砂や餌を抱えたママが嬉しそうに笑ってる。  ミイが亡くなった時、ママもいっぱい泣いていた。  もうペットが亡くなるのを見るのは辛いから、と今まで動物番組すら見ないようにしていたのに。  ミイが使っていたお茶碗に、チロル用に買ってきた餌をおく。  にゃうにゃう言いながら食べてるチロルを、目を細めて眺めているママ。 「にゃうん?」  見られていることに気づいたチロルが顔をあげると、ママがよしよしとやさしく頭をなでる。 「チロルは、かわいいなあ。本当にかわいい」  ミイのことも、いつもそうしてかわいがっていたもんね。  チロルは、そんなママの顔を不思議そうにながめていたけど、ピンク色にポワンと石が光ったのをわたしは見たよ。  その石は、本当に人間の幸せでチャージされるのかな?  なんとなく疑問に思った。
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