第三章「ミサキちゃんとヒューガとわたし」

5/10
前へ
/79ページ
次へ
 そのあとも無視は続いて、秋の遠足の班決めあたりが、一番のピークだったと思う。  わたしは誰にも声をかけられなくてポツンと一人ぼっちになってしまったんだ。  それまでは、ミサキちゃんたちと一緒だったし、他の子もそれぞれグループができちゃってて、心細くて困っていたら。 「なんで坂本は、メイのこと無視してんの?」  なんて、ミサキちゃんに向かって、ヒューガが大きな声でそんなこと言っちゃったりするから大変だった。 「あたし、メイちゃんのこと無視なんかしてないもん!」 「してんじゃん、ずっと仲良かったくせになんで避けてんの?」 「してないってば! いつもヒューガくんってメイちゃんの味方ばっかり!」 「は? 意味がわかんねえよ。どっちの味方とかじゃなく、坂本の態度のこと言ってんだけど?」  ヒューガ以外の皆がミサキちゃんの気持ちを知っていたから周りはハラハラした。  しばらくにらみ合っていた二人だったけど、ミサキちゃんがとうとう泣きだしちゃって、ヒューガは女子全員ににらまれていた。  結局、遠足の班はミサキちゃんのグループではなく、他の班の子が気を使ってくれてわたしは一人にならずにすんだけど。  そこから五年生になりクラス替えになるまで、なんだかギクシャクしたクラスのままで、居心地がとっても悪かったし。  多分、その頃からかな。  ヒューガが、他の女子だけじゃなくわたしともあまり話さなくなってしまったのは。  それでも朝だけは一緒に学校に通っていたのに、五年生になってからは「女子となんか一緒に学校に行けるかよ」って、わたしの前を足早に歩くようになってしまった。  今じゃ、ほとんど話すこともなかったのに、まだミサキちゃんとわたしのこと、覚えていたんだ。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加