第三章「ミサキちゃんとヒューガとわたし」

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 ヒューガが、わたしの態度を変に思ってるのが、ミサキちゃんのことだと勘違いしてしまわないように。   「あ、あのね、人に頼まれてネコちゃん探してるの」 「ネコ?」 「そう、白ネコちゃんなんだけどね? この辺りで見かけなかったかな?」 「なんで探してるの?」 「え?」 「あ、いや……、白いネコなんて、あちこちにいるだろ?」 「う、うん、そうだよね」  テレビに出ているあのネコちゃんだよ、とは言えず、ごまかすように笑って見せたら。 「オレも見かけたら教える。だから、まずは学校急ぐぞ! 今日は、校外学習の班決めがあるのわかってるか?」 「あ、」 「くじ引きだって言ってた。だから、安心しろ」  わたしが、遠足の班決めのことを思い出したのを気づいてくれたことに、少しうれしくなって「ありがとう」って声に出そうとした瞬間、ヒューガはさっと背中を向けてズンズン歩いてく。 「ありがと、ヒューガ!」  わたしの声なんか、まるで聞こえてないように走り出していく。  久しぶりに、ちゃんとヒューガと話せて嬉しかったのになあ。  そうだ、わたしも急がないと!  ヒューガを追うように走り出しながら、それでもアイルちゃん探しに視線をあちこちに向けた。  チロルと同じ首輪をしている白ネコちゃん。  あんな光る石をしていたら、皆気づくはずなのに。  百万円欲しさに探している人だっているだろうに。  見つからないのは、どこかに隠れてるのかなあ?  アイルちゃんのことを不良品だと言った時のチロルは、どこか悲しそうで、さびそうで。  だから、チロルの代わりに早く探し出してあげたい、ってそう思ったんだ。
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