第三章「ミサキちゃんとヒューガとわたし」

9/10
前へ
/79ページ
次へ
 ルートはミサキちゃんがテキパキと決めてくれた。  町の地図は全部、ミサキちゃんの頭に入ってるんじゃないだろうか。  そういえば、昔ミサキちゃんと一緒に遊んだ時もずい分町の中を探検したなあと懐かしく思いながら説明を聞く。  町の中心にある大きな神社も、よくミサキちゃんと遊んだ場所だった。  なんとなくだけど、その神社の名前を書いた字がミサキちゃんっぽい気がした。  今は話もしてないけれど、ミサキちゃんは覚えているんだろうか? わたしと遊んでた頃のこと。 「メイちゃん? だいじょうぶ?」  ヒラヒラと目の前でゆれていたのは、マオちゃんの手だった。   「副リーダーなんだから、ボーッとしてないでよ」 「あ、ごめんなさい!」  ミサキちゃんのするどい指摘に背すじをピンと伸ばす。 「ヒューガくんは工場跡地、マオちゃんは西公園、野々村くんは龍王寺、神田くんは青葉池、副リーダーは若葉神社の歴史を調べてきてね」  わ、わたしだけ、名前で呼ばれないことはさびしいけど、それでも目を見て話しかけてくれたことにホッとした。 「坂本は何すんだよ」 「わたしは……、今日と明日で時間通りに動けるのか、下見してくるわよ。それじゃダメなの?」 「いや、それが一番手間がかかるだろうけど、いいのか?」  ヒューガの問いかけにミサキちゃんはなんだか恥ずかしそうに小さくうなずく。  ああ、ミサキちゃんのこういうとこ全然変わってなくて良かったって思った。  分担を仕切ってくれて、決めた自分が一番損な役を引き受けるところ。 「ミサキちゃん、ありがとう」 「別に!」  わたしの声に食い気味に答えてソッポを向いてしまったミサキちゃんのホッペタがなんだか赤い気がした。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加