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「それでねえ、その後も少しだけミサキちゃんと話せたんだあ」
「フーン」
ジトーっと目を細めてわたしを見るチロル。
帰り道もちゃんとアイルちゃん探しをしながら帰ってきたけれど、見かけなかったことを伝えたら小さなため息をついていた。
そんなチロルにおかまいなしに、わたしが一方的に今日の出来事を伝えたもんだから、ますます興味なさそうな顔になっちゃってる。
「明日もママが家にいるから、チロルを学校に連れて行くことはできなさそうだけど、校外学習の日はね大丈夫だよ。ママも仕事だからチロルがいなくても気づかれない。またキーホルダーになってついてきて?」
「コーガイガクシュウ?」
「そう、この町のあちこちの歴史を調べるの。だから、いつもよりもたくさん歩くし、その分アイルちゃんがいそうな場所も探せるかもしれない」
納得してくれたのかチロルは、尻尾をパタンパタンと振って出窓の上にトンと跳ね上がる。
遠くを見渡せるこの場所がチロルのお気に入りなのかもしれない。
「心配だよね、アイルちゃんのこと」
「別に! ぜんぜん心配……なんかじゃないよ」
「え?」
「ボクは怒ってるんだ。アイルのことをずっと」
「チロル?」
「不良品になってしまったアイルは、ボクのことを間違ってるって言うからさ」
さびしそうにつぶやいた後、チロルは黙ってしまった。
「あのね、チロル。チロルとアイルちゃんの間に何があったのかは知らないよ? でも、友達のこと不良品なんて言い方は」
「メイだって友達とケンカしてたんでしょ、ミサキって子と。その時、腹が立たなかった? ムカつかなかった?」
背中を向けたままのチロルに何も言い返せなくなるのは、本当にその通りだったからだ。
だけど、ね?
「でもね、まだ仲直りできたわけじゃないけど、わたしはミサキちゃんと話せて嬉しかったよ? チロルだってきっと」
一瞬だけわたしを振り返ったチロルはジャンプして少しだけ開いていたドアの隙間から、リビングに向かって行ってしまう。
聞きたくないよ、そう言われた気がしたのだった。
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