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「なんか浮いてるみたいじゃないか?」
そうなのだ。
落ちてきた、というよりはゆっくりゆっくりと地上に舞い降りているみたいな?
動かない黒ネコはまるで眠っているみたい。
あっちにふわり、こっちにふわりと風に揺られている。
「メイ、来るぞ! しっかり持てよ!」
近くにある五階建てのビルの高さまでは、ゆっくりと降りてきたネコが、急に地球に引っ張られるみたいに、速度をはやめた。
落ちてくる場所に狙いを定め、ヒューガの上着を広げて見上げたら。
黒ネコが急に目が覚めたみたいに、バタバタと手足を動かしながら、バフンっと上着の中に落ちてくる。
小さなネコなのに、とっても重く感じて、わたしもヒューガも受け止めながら尻もちをつく。
尻もちをついた時、二人とも上着から手を離してしまって、一瞬めちゃくちゃ焦ったんだけど。
上着に包まれてしまったネコちゃんが、モゾモゾ動いているようで安心した。
「大丈夫? ケガしてない? どこか痛いところはない?」
上着の中に手を入れて抱き上げた黒ネコちゃんは、私の顔を見て『にゃあん』と一鳴き。
その時、黒ネコちゃんの首輪についている石が青く光ったんだ。
昨日は赤く光ったのに――?
「今日は助けてくれて、ありがと」
黒ネコちゃんは、ハッキリと人間の言葉でわたしに向かってそう言った……、気がする?
いや、そんなわけないじゃん、とヒューガを見たら、なぜか石みたいに固まっていた。
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