第一章「もう一つの昨日」

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「なんか浮いてるみたいじゃないか?」  そうなのだ。  落ちてきた、というよりはゆっくりゆっくりと地上に舞い降りているみたいな?  動かない黒ネコはまるで眠っているみたい。  あっちにふわり、こっちにふわりと風に揺られている。 「メイ、来るぞ! しっかり持てよ!」  近くにある五階建てのビルの高さまでは、ゆっくりと降りてきたネコが、急に地球に引っ張られるみたいに、速度をはやめた。  落ちてくる場所に狙いを定め、ヒューガの上着を広げて見上げたら。  黒ネコが急に目が覚めたみたいに、バタバタと手足を動かしながら、バフンっと上着の中に落ちてくる。  小さなネコなのに、とっても重く感じて、わたしもヒューガも受け止めながら尻もちをつく。  尻もちをついた時、二人とも上着から手を離してしまって、一瞬めちゃくちゃ焦ったんだけど。  上着に包まれてしまったネコちゃんが、モゾモゾ動いているようで安心した。 「大丈夫? ケガしてない? どこか痛いところはない?」  上着の中に手を入れて抱き上げた黒ネコちゃんは、私の顔を見て『にゃあん』と一鳴き。  その時、黒ネコちゃんの首輪についている石が青く光ったんだ。  昨日は赤く光ったのに――? 「」  黒ネコちゃんは、ハッキリと人間の言葉でわたしに向かってそう言った……、気がする?  いや、そんなわけないじゃん、とヒューガを見たら、なぜか石みたいに固まっていた。
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