第一章「もう一つの昨日」

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 だってネコが話して、ヒューガが石みたいになってる。  というか、よく見たら車も歩いている人も、全部止まってるとか、一体何事なの⁉  わたしだけが別の場所に飛ばされちゃったみたいな気がして、何も聞きたくないと首を横に振ったのに。 「昨日、いや、正確にいえば『もう一つの昨日』、ボクと出会ったこと覚えていない?」 「……」  覚えている。  さっき青い光に包まれた瞬間、思い出したんだ。  あの時、わたしの目の前に落ちてきた黒ネコが車にはねられる瞬間、赤い光が町を包んだ。  赤い光の中で、黒ネコとわたしの目が合った。  その後は、覚えていないけれど。  朝起きてから黒ネコに会うまでの記憶は、今日と同じだ。 「危うく、ボク死んじゃうとこだったんだよね。で、とっさに時間を巻き戻したわけ。目が合ったキミにSOSを発信してね」  赤い光に包まれた時、聞こえた、あの声。 『タスケテ!』  夢の中で聞こえた気がした声は、確かにこの子だった。  というか、この子は本当にネコなの?  ネコって、にゃあって鳴くはずでしょう?
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