第一章「もう一つの昨日」

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「助けてくれた御礼(おれい)は必ずするよ。きっとキミの役に立つと思うよ、ボクは」 「いえ、そういうのは全然……」 「キミの名前、教えて?」 「……メイ……、朝倉芽生です」 「ボクの名前はチロル。あ、ボクが話せることは他の誰にもナイショだからね、メイ」 「う、はい……」  言えるわけない。  ネコがしゃべるだなんて、誰が信じてくれる?  誰に話したって、わたしがおかしくなったって思われちゃうだろうし。  話しながら、そういえばと思い出した。 「えっと、チロルさん、ケガはしていない?」 「さん、はいらない。チロルでいいよ。大丈夫、平気だよ。メイとこの少年がしっかり受け止めてくれたから」  ほほえむように目を細めたチロルに安心した。 「さあ、そろそろ時間が動き出すよ、このチカラを使うとめちゃくちゃ疲れるんだよね。しばらく眠らせてね、メイの側で」 「む、無理だよ。わたし、これから学校に行かなくちゃならなくて」 「学校? よくわからないけど、ついてくか。じゃあ、これからよろしくね、メイ!」
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