11 天原王

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11 天原王

「須佐の行方は掴んだか?」  玉座から天原王が問う。美豆良に結った髪は白髪で、顔には深く皺が刻まれているが、声に張りがあり、睥睨(へいげい)して眼前の家臣を威圧する。  跪坐(きざ)で天原王に対峙しているのは、流火人だった。 「ええ。すぐに」 「どこにおるのじゃ。捕えて連れて参れ。その首、儂自ら、討ち取ってくれるわ!」  親子だからこそなのか、他者をなんとも思っていないからなのか。  実の息子に対しても、天原王の容赦はない。 「須佐は満穂の近くに。満穂の姫君と接触したようにございます。これを利用しない手はありますまい。須佐を使って満穂の巫女姫を手に入れ、その(のち)に須佐の首を打ち取る事が、宜しいかと」  流火人の進言に僅かに眉を寄せる。 「そなたは須佐の友ではなかったか? 儂につくのは何のためぞ」 「理由は明白。追放された須佐についても、何の利益にもなりません。天原王につけば、相応の報酬がございましょう。私は、一族の安泰な生活を望むだけ」  流火人の言葉に天原王が笑い出した。 「欲を隠さないそなたの言葉、気に入った。須佐を使って満穂を攻め、須佐を討ち取ろう。満穂と姫巫女は儂のものじゃ!」    流火人が冷ややかな瞳で天原王を見ていることに、自分の言葉に酔っている天原王は気づかない。  玉座から立ち上がり、流火人の耳許で囁いた。 「して、策はあるのか?」  息がかかるほど近く、顔を除き込みながら話す天原王に嫌悪しながらもおくびにも出さず、流火人が静かに答えた。 「火攻めにございます」  
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