12 秦

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12 秦

 平和な満穂にも戦乱が近づいていた。  満穂内の鍛冶集落から鍛冶頭の(はた)が、刀剣、弓、槍、などの武器のほか、挂甲(けいこう)といった甲冑類を瑞穂王に届けた。 「満穂に受け入れ、(まつりごと)にも引き立ててくださる瑞穂王に、我らの技術を捧げましょう」  渡来人たちを友好的に受け入れた満穂には、村人たちの集落と区画した渡来人の集落があった。  武具などの鍛冶集落、勾玉などの硝子集落、須恵器などの陶芸集落、養蚕などの機織り集落の四つだ。  満穂王は渡来人たちと村人に揉め事が起きぬよう、自ら渡来人集落に出向き、それぞれの集落を束ねる頭を置いた。  四つの集落の長は、人望がある鍛冶頭の秦が務め、満穂の村人との仲介役となった。  秦は寡黙だが、自身の作る武具に関しては一切の妥協がなく、ずば抜けて刃欠け、刃折れがない。  満穂王は秦から譲り受けた武具を、満穂の長を通じて男性に配り、誰もが武具を扱える策を講じた。 「周囲の柵を高くすること。また、持ち盾のほか、垣盾(かきだて)の配備をすればより、満穂を守れましょう。」  秦から戦の知恵を借り、満穂の民を守るため、柵をより高く、頑丈に作り直した。また、満穂王は渡来人集落を含む満穂の集落の周りに、一枚辺りの高さが一間(いっけん)(180cm)程の大きな垣盾を配備した。  垣盾は獣の革を鞣して、厚い木板に貼り付ける満穂特有の頑丈な造りで、仕上がりまでにかなりの日程を要する。  だが、満穂の村人は仕事によって貰える報酬に沸き立っている。  満穂と渡来人たちは、満穂王の政策が功を奏し、友好的な関係を築いていた。
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