13 誓い

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13 誓い

 瑞穂は、満穂を一望できる社殿櫓から、広がる田を眺めていた。稲穂の刈り取りは終わり、几帳面な田頭(たがしら)の元、田は綺麗に整備されていた。刈り取られた稲束で作った稲積(いお)がいくつも点在している。  須佐の襲来以来、社殿の警護も厳しくなり、和貴の存在を知る稚羽矢が常に側に控えているため、自由に野山を駆け巡ることができなくなった。  市井の少年と思っていた志世良は、満穂王の臣下である磯良の息子だった。満穂王が稚羽矢から社殿を抜け出していることを聞き、瑞穂の供人となるよう志世良に命じたのだ。  稚羽矢と筒井筒の仲であった志世良は、稚羽矢から瑞穂の事を聞き、何気なく近づくことに成功した。 「子鹿のように山を駆け、快活に笑う姫君は、市井の少年そのものだった」  後に、志世良が稚羽矢にそう語ったのだと聞かされた。 「だが、猛り狂う大きな猪を静かにさせてしまう神々しさは、満穂の巫女姫であらせられる。自分は臣下であり、巫女姫としてはお目にかかる機会もないが、身命を賭してお守りしよう」  神妙に語った志世良は、これまでになく大人びて見えたと稚羽矢が笑った。 「志世良は信頼できますよ。あの者が守ってくれるならば、安心できます」  頬を赤らめて言う稚羽矢と大事に思ってくれている志世良のおかげで、瑞穂は巫女としての自覚がますます強くなっていた。  
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