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17 親子
烈しく刀を交わらせる天原王と須佐。
ガッ、ガキィィンと金属がぶつかり合う音が響く。
太刀筋は互角。
双方が睨み合い、憎しみが周囲に迸る。
そこへ、ガサリと音を立てて弓矢を構え、転がり込んで来たのは、流火人だった。
天原王がニヤリと笑う。
「須佐、これでそなたも終いぞ!」
そして、天原王は流火人に命じた。
「流火人、須佐を討て!」
流火人は弓矢を須佐に向け、ジリジリと刀を交えている、二人ににじり寄る。
己が勝利を確信し、天原王が刀を持つ手を緩めた瞬間、流火人が天原王に弓矢を向けた。
「須佐様、待たせましたな。あなたを慕う天原兵と共に木々を切り倒し、支流の流れを変えました。一刻と経たぬ内、水がこちらに流れ込んで来ましょう」
流火人の言葉に、天原王の形相が変わった。
「流火人! きさまっ、主を裏切るのか!」
「流火人は、一度たりとも主の私を裏切りませんでしたよ」
須佐が天原王に答えた瞬間の事だった。
祈りを捧げていた瑞穂から空に向け、一直線の光の筋が放たれた。
「巫女姫っ!!!」
須佐は瑞穂に駆け寄りたかったが、天原王と対峙しているため、見ていることしかできない。
歯を食いしばり、渾身の力を振り絞って天原王を突き飛ばすと、その首に刀を振りおろした。
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